日本ではまだ法的に認められていない同性婚。
台湾ではアジアで初めて同性婚が認められました
日本で2019年2月、同性婚を認めないことの違憲性を問う初の訴訟が起こされました。
原告となったのは全国13組のカップルで、4地域(札幌、東京、名古屋、大阪)の地方裁判所において国を相手に損害賠償を求める訴訟を起こしたのですが、お隣の台湾ではアジアで初めて同性婚が正式に認められることになっているのをご存知ですか。
2018年12月現在、同性婚を認めている国は25ヶ国。
2001年4月1日に法律が施行されたオランダをはじめ、同性婚を認めている国は2019年2月現在、25ヶ国に上っています。
具体的には、ベルギー、スペイン、カナダ、南アフリカ、ノルウェー、スウェーデン、ポルトガル、アイスランド、アルゼンチン、デンマーク、ブラジル、フランス、ウルグアイ、ニュージーランド、イギリス(北アイルランドを除く)、ルクセンブルク、アメリカ、アイルランド、コロンビア、フィンランド、マルタ、ドイツ、オーストラリア、オーストリア(法律施行順)と、アジアの国はひとつもありません(参考:虹色ダイバーシティ公開資料より)
また、婚姻とほぼ同等の代替制度を導入しているのは、イタリアやスイス、ギリシャ、ハンガリー、エクアドル、チリなど27ヶ国もある一方で、同性愛を認めないプロパガンダ禁止法の可決されている国が3ヶ国、禁固刑を定めている国が71ヶ国、同性愛に死刑を処する国が8ヶ国も存在しています(同)
こうしたなか、台湾では2019年2月21日、行政院(内閣に相当)で同性カップルの婚姻を法的に保障する特別法案が閣議決定されたことを受け、アジアで初めて同性婚が認められることとなりました。
そこで今回は、台湾で同性婚が認められるまでの大まかなの流れをまとめてみました。
台湾で初めて同性愛をカミングアウトした祁家威氏
日本のお隣りで旅行先としても人気の台湾ですが、第二次世界大戦終了後の1947年から1987年までは戒厳令が敷かれており、2000年までは国民党の一党独裁という状況にありました。
そうしたなか、ある人物がメディアの注目を集めることとなりました。
その人物こそが祁家威(チー・ジアウェイ、Qi Jiawei)
1986年3月、当時28歳の彼はゲイであると記者会見で発表し、台湾で初めて同性愛者であることをカミングアウトした人物となりました。
会場にはAP通信やロイター、AFPといった海外メディアも詰めかけ、祁氏は約8,000字の声明を出しています。
そして同年8月には、婚姻届が受理されなかったとして立法院(国会に相当)に訴訟を起こすものの「同性愛は少数の変態で、公序良俗に反する」との回答を受けたばかりでなく、5ヶ月の禁固刑に処され、思想教育まで受ける羽目に。
彼はその後も立法院や法務省に同性婚を認める請願を続け、1998年と2000年には台北地方裁判所に提訴していますが、それらの請願や提訴はことごとく撥ねつけられる結果となりました。
それでも彼はLGBT当事者として、同性愛者の権利を認めてもらうための活動をやめることはありませんでした。
2000年代、世の中の潮流に動きが
2000年代に入ると少しずつ世の中が動いていきます。
人権立国を掲げて2000年3月の選挙で総統に選出された民進党の陳水扁が、それまで一党独裁していた国民党や中国共産党との差異を明確にする狙いも込めた人権保障法案を2001年3月に提案し、このなかに同性婚を認める内容を盛り込んだのです。
ただし、同性婚については民進党内でも議論が熟しておらず、同法案は放置されてしまう結果となりました。
一方、2003年には中華圏で初となるプライド・パレード「台灣同士遊行」が台北で開催(参加人数:約1,000人)され、台北市長やのちに台湾総統となる馬英九に加え第一人者である祁家威も多くのLGBTと一緒に参加し、レインボーフラッグを掲げて台北の街を闊歩しました。
この台灣同士遊行は毎年開催されており、直近の2018年10月には13万7,000人の参加するアジア最大級のLGBTプライドになっています。
また、翌2004年から05年にかけては、台湾人の映画監督であるアン・リー(李安、Ang Lee)がハリウッド映画「ブロークバック・マウンテン」で監督を務め、アカデミー賞で監督賞、脚色賞、作曲賞に輝いたほか、ヴェネチア国際映画祭で最高賞である金獅子賞、ゴールデングローブ賞では作品賞(ドラマ部門)、監督賞、脚本賞、主演歌賞をそれぞれ受賞。
こうした行政や民間の動きが功を奏したのか、台灣では同性愛に対する世間の見方も変化の兆しを見せていったのです。
世の中が大きく動いた2017年
少しずつ同性愛が世の中に受け入れられつつあるなか、台湾が同性婚の認可に向けた大きな転換期を迎えたのは2017年のことです。
この年、台湾では司法院(最高裁判所に相当)の15名で構成する大法官会議によって、同性婚が認められないことを違憲とし、2年以内に民法を改正するか新たな法律の制定による是正を立法機関に命じました。
最高裁判所による決定なので覆ることはありません。
これにより台湾では、同性婚を認める社会へと大きく舵を切ったのです。
この裁判のきっかけとなったのは、2015年に提出された2枚の要望書で、このうち1枚が前述の祁家威によるもの。
57歳となっていたLGBT活動家の彼は、同性パートナーとの結婚登録を戸籍事務所から距離されたことを受け、裁判所に提訴していたのです。
ちなみにもう1枚は、3組の同性カップルからの婚姻届を不受理としたため、彼らから告訴されていた台北市役所から婚姻の解釈に関しての要望書でした。
同性婚が正式に認められることになる2019年
2017年の最高裁判所の決定から2年が経過した2019年、台湾では2月21日に行政院が同性カップルの婚姻を法的に保障する特別法案が閣議決定されました。
同法案では、18歳以上の同性カップルの権利やカップル間の財産の継承権、医療行為の同意権などを認めている一方で、どちらかの実子を除いて養子縁組は認められていません。
立法院での審議を経たのち、5月24日に施行され、正式に認められアジア初となる快挙となりました。
祁家威が台湾で初めて同性愛者であることをカミングアウトした1986年から30年以上が経過し、ようやく台湾で正式に同性婚が認められることになったのです。
とはいえ不安要素もあります。
法的に同性婚が認められたとしても、社会のLGBTに対する受容度に関しては別のこと。
2018年11月に台湾で行われた同性婚をめぐる国民投票の結果をここで紹介します。
同性二人が婚姻関係を築くことを支持しますか、という質問に対して、賛成票が330万票だったのに対して、反対票には2倍以上の690万票が投じられました。
また、民法の婚姻規定が男女カップルにのみ適用されるべきですか、という質問に対しては、賛成が765万票、反対が290万票という結果。
台湾の世論としては同性婚への反対派が過半数を占めていることが明らかとなったのです。
実際に法律が施行されれば、世の中の同性婚に対する認知度や許容度が上がるという見方もありますが、法律が出来ただけではLGBTが住みやすい世の中に直結するとは限らないのも事実。
法整備を第一歩として、これからお隣の国・台湾がLGBTにとって住みやすい場所になることを心から望みます。
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