現役ゲイカップルが語る!
代理出産で子どもを迎えるまで(パート6)

紆余曲折ありましたが、無事に健康な赤ちゃんが生まれましたので、今回の記事を通してご報告をさせていただきたいと思います。

11月21日、無事に子どもが誕生しました

私事の代理出産記を数回にわけて執筆してまいりましたが、つい先日父親になることができました。

私は直接出産に立ち会ってはいませんが、3500グラムの健康な男の子でした。
とても小さな産声しかあげなかったと聞いていますが、今は俗にいうギャン泣きで元気にミルクをせがんでいます。

代理母さんが妊娠して以降もとても不安な日々を過ごしていたため、いまだ夢を見ているようで、まだ父親になった実感が湧かないのも事実ですが……。

ここでは最終章という形でメキシコでの代理出産を振り返り、そこで感じた気づきや感謝の気持ちをお話できればと思います。

代理出産という長い旅路にようやくピリオド

同性結婚をして10年、ようやく1児の父親になることができました。
代理母さん、義理の家族、友人やさまざまな方の協力がなければ到底成しえなかったこと、この場を借りてお礼を申し上げます。

コロナ禍に突入する2019年頃でしょうか、首都にある代理出産エージェントに赴いたことがまるで昨日のことのようです。

エージェントと契約後も、代理母さん探しとドナー決定に難航。
三度目のトライで授かった命と出会うまでには、言葉では表せないくらいの苦悩と苦労の連続でした。

素晴らしい代理母さんとの出会い

私たちカップルの元にコウノトリが訪れてくれたこと、これは一重に代理母さんとの出会いのおかげです。

彼女に関しては以前の記事にて紹介していますが、辛い妊活時期を辛抱強く耐えてくださり、そして命を授かった瞬間から自分の子どものように沢山の愛情でお腹の子どもを育んでくれました。

代理母さんにはご主人との間に三人の子どもがあり、妊活から出産のその瞬間まで多大なバックアップをしていただきました。子どもを授かったことと同様に、遠いメキシコに第三の家族ができたことを心から喜ばしく思っています。

一筋縄ではいかないサロガシーストーリー

正直何から話していいか分からないのですが、子どもを持つまでを簡単にまとめますと、代理母さんとの出会いから出産までは約2年半でしょうか。

運動率の良くなかった精子、受精しても胚盤胞にならず湯水のようになくなっていく卵、そしてなかなか着床しないという現実に泣いた夜は数知れず。

エージェントから「早い人は代理母と出会って1年ちょっとで赤ちゃんが生まれることもよくある」という成功例を聞いてしまったがゆえに逆に焦ってしまったのかもしれません。

HCGが800を越え、クリニックから妊娠報告を受けたその日の夕刻。
その瞬間はこれから歩んでいく人生街道の中で決して忘れることはないでしょう。

ここでは割愛しますが、お腹の赤ちゃんに異常が発生したときには代理母さんの献身な日々とクリニックの皆さんのおかげで持ち直し、無事に出産を向かえることができました。(なお、メキシコではスペイン以上にコロナ対策が厳しく出産時の面会は1名、PCR検査で陰性が出た場合のみ可能でした)

出産後も長いペーパーワークに悩まされる

代理出産を行う国によってもアプローチは異なりますが、産後は親権取得のために非常に長い法的な手続きを行う必要があります。

メキシコにおける代理出産は以前の記事でお話した通り違法なものではありません。
しかしながら、子どもの親権、パスポート申請と出国許可を得るのは裁判所の判事次第であるため、いつ頃スペインに帰国できるかは未知数です。

かなり否定的な見解を持っている判事もいるので正直どの判事に当たるのかが運の分かれ目、私たちの弁護士が遠い目でそう話していたことが印象的です。

また、メキシコのお役所仕事はスペイン同様にスローであることも付け加えておきましょう。(遺伝上の父親はメキシコに滞在して法的な手続きを完了する必要があります)

同じホテルに滞在しているバルセロナのカップルは既に約2ヶ月前からメキシコにいるそうなので、やはり長期のスパンでの滞在が必要になるのでしょう。

昨年の例だと、あるカップルはストライキなどが重なったせいで出国許可がなかなか下りず、赤子が1歳を迎える時期にようやく母国に帰還できたそうです。

いくらエージェントや弁護士と議論を重ねても、こればかりは運次第という側面が大きい点は否めません。

意見の相違、調整力不足が浮き彫りに

メキシコに赴き、そこで子どもの出産を見届けましたが、代理母さん夫妻がなんと素晴らしい方々なのだろうということを改めて実感するとともに、現地に滞在して過ごす中で感じたことが多々あります。

正直なところ色々な場面でネガティブな感想を持たざるを得ない点も……。
ここではそれらを幾つか挙げていきたいと思います。

代理母さんと事前のコンタクトが取れなかった理由

通常であれば妊活、妊娠中の代理母さんとはすぐに会いにはいけない距離感だからこそ、日々の生活や状況について互いに連絡を取り合うのがベストなのでしょう。

しかしながら、クリニック側から事前の連絡交換は代理母さんの負担を考えると推奨しないとの助言があったため、タイミングを見計らってコンタクトを取れればと思ってきました。

妊娠中もメールアドレスもしくはワッツアップの連絡先を交換したい旨をクリニックサイドに伝えていたものの、結局私たちがダイレクトに連絡を取り合うことができたのは息子が生まれてからでした。

クリニックサイドは「まだ連絡を取り合うのは早い」とのことでしたが、代理母さん本人に確認すると、そもそも連絡をするべきではないとクリニック側から強く言われており、連絡をしたくともできなかったそうです。

確かにこちらからの度重なるメッセージは代理母さんにストレスを与えかねません。しかしながらクリニックを挟んだコミュニケーションが必須な中で、お互いの意思疎通が上手くできず、辛い妊娠期間中に彼女をバックアップできなかった点は残念でなりません。

プラン、説明がコロコロと変わる

もはやこれはスペインでさんざん経験済みなので慣れたものですが、エージェントを通して段取りを確認しているのにも関わらず、プランが変更されることには参りました。

全く土地勘のない場所ですので、余計にストレスを感じたのは事実です。
いくつか例を挙げると、

  • 予定されていた病院ではなく、郊外のランク下の病院に変更される。(理由は最後まで分からず、お茶を濁されたままでした)
  • 何かと追加費用を徴収される。
  • 必要があると聞き日本から準備した書類(アポスティーユ認証が必要なもの)が、実は必要なかった。
  • 何度もエージェントに確認したものの、現地クリニックで支払い未払いを指摘される。
  • 代理母さんとクリニック側で金銭面の乖離が生じる。

全てが上手くいくとは思っていませんでしたが、私たちも代理母さんサイドもクリニック側にコミュニケーションや円滑な連絡ができていなかったことに関してはしっかりと伝えました。

クリニックサイドの説明によると担当者が変わったために私たちや代理母さん側とのコミュニケーションが上手くできなかったそうです。

日本人の私からすると、やはりそのあたりはしっかりしてほしかったというのが本音。結果良ければすべて良しではあるのですが、随所でオーガナイズされていない不手際が目立ったのは少々残念でした。

いろいろあったけれど……代理出産が希望になれば

以前の記事でも説明済ですが、私たちがサロガシーの旅にメキシコを選んだ主な理由は、

  • スペイン語圏であり語学的な負担が少ない。
  • ヨーロッパ人(その大半はスペイン人ですが)が多く渡航し、近年ゲイサロガシーで多くの実績を挙げている。
  • アメリカに比べた経済的負担の軽さ。

になります。

確かにエージェント側は事前の育児プログラムの提供から日々のフォローを徹底してくれましたし、もっとも肝心なサロガシープログラムは他の国と比べてもしっかりと機能していたと思います。

前項でお話した通り、クリニック側のオーガナイズ能力に関しては不十分な点が多かった点は事実ですが、それでも私たちは強く素晴らしい代理母さんと出会い、出産報告をすることができました。

何度も記事を通して伝えてきましたが、サロガシーに関してはさまざまな賛否両論があります。しかしながら、それでも不妊に苦しむ、望んでも子どもを授かることができないカップルにとって、代理出産は一つの手段であることも事実。

倫理観と人権、いろんな価値観で代理出産を捉え議論は重ねられますが、今切に思うのは代理出産に関するより明確な法整備が各国で整い、性別、シングルであるか否かを問わずに多くの人々の選択肢であり続けるということです。

まとめ

最近ではメキシコの代理出産を禁止するための署名活動などが行われたり、今後数年間のうちに、メキシコの代理出産に関する法規制が大きく変わることも考えられます。(どこの国においても女性の人権、子どもの取引に関する議論はありますが……)

私は他の国の代理出産事情に詳しくありませんが、どこの国でサロガシーを行うとしても、代理母の権利保障が確立され、健康面での管理が行われることを前提として候補国を選んでほしいと思います。

私たちの代理出産の長きに渡る旅路はいったん幕を閉じました。
(スペインに連れて帰るためのペーパーワークは現在進行形ですが・・・)

  • 「ゲイが子育てなんて」
  • 「女性は孵卵器ではないんだぞ!」
  • 「子どもが成人したらあなたたちは何歳なの?」
  • 「母親のいない子どもが不憫」

耳にタコができるほど聞いてきたこれらの言葉。
しかしながら、私たちは外野のネガティブ意見を弾き飛ばすくらい幸福な人生を子どもに歩ませられるよう努力していく所存です。

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この記事を書いた人

橋本ウサ太郎

橋本ウサ太郎
新宿二丁目の元バーマネジャー、海外放浪の末、年下スペイン人男性と同性婚。
スペインの田舎町で悶々とした日々を送りながら平和に暮らすゲイ。
アメリカでの代理母出産により二人パパになる予定の三十路ライター。
好きな言葉は、「ペンは剣よりも強し」。

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