一大決心でもある親へのカミングアウト
する前に知っておいて欲しい注意すべき6つのポイント

  • 2019.07.10
  • 2019.08.14

ライフ・生活

あなたは誰かに自分の何かを大々的にカミングアウトしたことがありますか?

ゲイであれば聞いたことのない人はまずいないと思いますが、念のためにお伝えすると「カミングアウト」とは、これまで公にしていなかった自らの出生や病状、性的指向等を表明すること(出展:Wikipedia)とされています。

ここでは特に「性的指向(セクシュアリティ)について明らかにすること」をカミングアウトと定義して進めます。
LGBTが市民権を得るようになりつつあると言っても、やはり周囲の人にカミングアウトしているゲイはまだまだ少数派。

それでも本当の自分のことを知ってもらいたいという思いから、最も身近な両親にカミングアウトしたいと考えている人もいると思います。
両親へカミングアウトする場合、どんなことに気をつけるべきでしょうか。

今回は留意すべき点についてお話ししたいと思います。

ポイント1:カミングアウトする目的を把握する

人によってケースバイケースだと思いますが、「両親にカミングアウトしたい」と考えるのには、理由があるのではないでしょうか。

例えば「帰省するたびに彼女がいるかどうか聞かれて困っている」とか、ある程度年齢を重ねているなら「結婚するように母親から何度も言われるので、自分がゲイであることを伝えておきたい」といった話は、多くのゲイが経験しているのではないでしょうか。

また「いま真剣に付き合っている恋人がいるので、両親にきちんと紹介しておきたい」や「同棲することになったので、これを機に真実を伝えたい」というケースもよく聞かれます。

ここで大切なのは「なぜ今、このタイミングで両親にカミングアウトするのか」を考えることです。

なぜカミングアウトしたいのか、もしくはカミングアウトする必要性があるのか、それらをきちんと自分なりに説明できるようにしておけば、実際に両親に伝えるときにも話がブレないようにすることが出来ると思います。

ポイント2:前もって大切な話があると伝えておく

両親へのカミングアウトは、おそらく一生で一回の出来事になります。
自分にとって大切な話をする機会ですし、両親にとっても忘れられない記憶に残る日になると思います。

ですので、夕飯の雑談の途中で唐突に「実は俺、ゲイなんだ」などとカミングアウトするのはお勧めできません。
きちんと話のできる環境を整える必要があります。

とてもプライベートな話ですので、自宅など第三者のいない場所が最適ですし、何より遅くても話をする前日までには「ちょっと話したいことがあるんだ」と両親に伝えておくのが良いのではないでしょうか。

なぜか?
カミングアウトするあなたは、自分がゲイだと気づいた瞬間から長い間、自分の性的指向についてよく考えていると思います。

一方で、両親にとって息子のカミングアウトは青天の霹靂となる可能性もあるのです。
ですので、両親にいきなり伝えるのではなく、心構えを持ってもらう意味でも数日前には「大切な話がある」と伝えておきましょう。

ポイント3:両親に罪悪感を与えない

私事ですが、筆者は母親にカミングアウトしたことがあります。
正確に言うと自らカミングアウトしたというより「お母さん知ってるのよ、本当は男の子が好きなんでしょ?」という質問に「うん、そうだよ」と返答したのが大学生のときでした。

泣いている母親の口から「私の育て方が悪かったのかしら」という台詞が出てきたのは今でもよく覚えています。
そのとき筆者は「ゲイは生まれつきだよ、母さんのせいじゃないよ」とすぐに返答しました。

物心ついた頃から女の子よりも男の子に惹かれる自分には気付いていましたし、それが母親の育て方や自分の選択によるものではないことも分かっていたからです。
しかし、現在ほどLGBTや同性愛についての認知度が高くなかった当時、筆者の母親のリアクションは驚くに値しないものでした。

そうなんです、息子にゲイだとカミングアウトされた両親は、自分たちの育て方に何か非があったのではないかと自責の念に駆られる場合があるのです。
というよりも、一瞬たりとも「息子がゲイなのは、自分たちのせいなのでは?」と考えない親たちの方が少ないのではないでしょうか。

世の中の親たちは、常に「これで良いのだろうか」と迷いながら子育てをします。
そんな中である日突然、カミングアウトされたら驚きと同時に自分たちの子育てを振り返ってしまうようです。

ですから、カミングアウトするなら、両親に罪悪感を植え付けるような言動は慎むべきです。

ポイント4:自分が幸せであることを知ってもらう

先ほどの筆者のカミングアウトには続きがあります。

細部については記憶が定かではないのですが、おそらく30分ほどの会話の中母親から、当時の同性愛者の立場や社会的背景も鑑みた上での発言だと思いますが「お母さん、あなたがゲイなのが本当に悲しくて、、、」と言われました。

おそらく結婚もできない、ということは夫婦になれないだけでなく子供もできない、つまり家族を持つこともできない孤独な人生を送るであろう、自分の息子が不憫だったのだと思います。

そんな母親に対し、筆者は「たしかに結婚はできないと思う。でも僕は友達や仲間に恵まれているし、毎日楽しい日々を送っているよ。それにこれからも幸せな日々が待っていると思うから心配しないでいいよ」と伝えました。

すると最後には「ゲイであったとしても、あなたが幸せならそれでいい」とも言われました。

世の親たちは息子がゲイであった場合、なぜ悲しむのでしょうか?
一昔前であれば「世継が産まれないので、家が途絶えてしまう」という理由も考えられるかもしれません。

でも現代の日本において、親たちが悲観してしまうのは何と言っても「子どもがこの先、幸せな人生を送れないのでは?」と考えてしまうからに他なりません。
なので、カミングアウトするときに気をつけたいのは「少なくとも今の自分は幸せである」という点を伝えることです。

「ゲイに生まれて本当に幸せ」だと言い過ぎかなという感じですし、「ゲイだけど幸せだよ」と言い方だとちょっと引っかかるかもしれませんが、幸せであることを強調するのは重要なポイントです。

ポイント5:両親へ感謝の気持ちを伝える

4つ目のポイントとして、両親を安心させるために「自分が幸せであることを知ってもらう」と話しましたが、もうひとつ伝えた方が良いのは「感謝の気持ち」です。

ゲイであると突然カミングアウトされ、自責の念に駆られたり、自分たちの育て方に負い目を感じたり、罪悪感を感じたりしているかもしれない両親に「今まで育ててくれてありがとう」という言葉を添えてあげられたらベストではないでしょうか。

同性婚の認められていない日本では、結婚式を挙げる同性カップルは本当にごく僅かで、そういう意味では人生の節目で両親にきちんと挨拶する機会もないのかもしれません。

なので、親に感謝の気持ちを伝える場として利用するのも、カミングアウトを成功させる秘訣かもしれません。

ポイント6:早急に理解してもらおうとしない

自分がゲイだと気づいた瞬間からカミングアウトに至るまで、早い人でも何年も年月をかけてじっくりと考えていると思います。
自分の性的指向を知り、それを認め、さらに誰かに伝えるようと考えるのには、それだけ長い時間が必要です。

それはカミングアウトされた両親も同じこと。
あまりに突然のことで言葉を失ってしまうかもしれません。

両親からひどい言葉を投げつけられるかもしれません。
両親が責任のなすり付け合いをしてしまうかもしれません。

でも仮にそんな修羅場になったとしても、許してあげてください。
あなたが自分の性的指向を受け入れ、許し、認め、誇りに思うまでに掛かった年月を思い出して欲しいのです。

いますぐに分かってもらえなかったとして、時間が経てば理解してもらえるかもしれないし、そうでないかもしれません。

いずれにしても、両親にも時間を与えてあげて欲しいのです。

カミングアウトすることは、本当のあなたを両親に知ってもらう第一歩。
カミングアウトすると決めたら、上記の6つのポイントに気をつけてもらえたらと思います。

記事の関連タグ

リザライのコンシェルジュがYoutubeを始めました

リザライチャンネル
LGBTカップルを100組以上成立させた
伊原と山田の2人がお悩み相談や
対談・インタビューなどを発信する
リザライ公式YouTubeチャンネルです。

リザライのYouTubeチャンネルはこちら

リザライチャンネル・最新動画

シェアにご協力お願いします

この記事を書いた人

いなば

いなば
神奈川県生まれ。小学生の頃から何となくゲイだと気付き、中学高校と男子校で過ごすなかでセクシュアリティーを確信。大学在学中に母親へカミングアウト済み。
20歳で初めて自分以外のゲイと出会う。
相方の海外駐在に伴い、退職して赴任先へ付いていったことも。
生意気で向こう見ずなクソガキ時代から年齢を重ね、徐々に穏やかで楽天的な性格に。元新聞記者で現在はライター・カメラマン・インタビュアーとして活動する東京在住の40代ゲイ。

この記事と類似テーマの記事

ゲイがカミングアウトをした相手に望むこととは?
カミングアウトという言葉を聞いたことがあるでしょうか。 最近では、テレビなどでも聞かれるようになりましたが、正しく認識している人はどのくらいいるでしょうか。 カミングアウトというの ...

カミングアウトしたくない方向け|結婚しないの?と聞かれた時の対処法(仕事編)
働いている職場で「結婚しないの?」と聞かれることがあります。 この質問は聞いた人にとっては何気ない会話かもしれませんが、LGBTQ+の方にとっては非常に繊細であり、返答に困ることが ...

同性婚活スタート、親へのゲイカミングアウトはどうすべきか
ゲイとして生きるにあたり、いつもカミングアウトというデリケートな問題が心を揺さぶります。 カミングアウトをする時期は異なりますが、いわゆる『婚活』を始めたタイミングでゲイである自分 ...

家族へのカミングアウトのタイミングは?それとも嘘をつき通すべき?
ゲイカップルが直面する一つの壁としてカミングアウトが挙げられます。 そもそもカミングアウトが必要なのかは個々の価値観にもよりますが、いずれ向き合うことになるであろう家族への伝達は会 ...

相手がゲイだと知った時、ゲイ当事者が言われたくない・言われて悲しい事
突然ですが、あなたの周りにゲイはいるでしょうか。 一般的な統計によると、色々な説はあるものの、人口の5パーセントから10パーセントがLGBTだと言われています。 そのため、自分自身 ...


Page Top