誤解されやすいHIVについて。
症状から治療方法までHIVの誤解を解説
日本ではHIV感染が激増していると言います。
性病の代名詞とも言える病気の1つであり、不死の病ではなくなったものの完全にウイルスを除去することが出来ない難病です。
同性間での感染が多いことでも知られていますが、今回はそんなHIVとエイズについてを解説していきたいと思います。まずは正しい知識を身に着けて、予防することから始めましょう。
日本で感染爆発?HIV感染の恐怖とその定義、治療法を解説
HIV感染はもはや他人事ではなくなってきました。
ゲイ男性は比較的HIVの感染リスクに対する知識があると言われていますが、実際はどうなのでしょうか。
今回は避けては通れないHIVの実態について解説。
健康を損なわない日常生活を送るためにもHIVの誤解をなくすためにも、是非今回の記事を参考にしてみてくださいね。
HIVとは?エイズとの違いから感染経路まで
ここではまず基本中の基本であるHIVとはなにかという疑問を解説していきます。混同してしまいがちなエイズとの違い、そして感染する経路をまとめていくので、まずはここをしっかりと理解することから始めましょう。
誤解多し!HIVとエイズを混同しないで
義務教育でもHIVやエイズについて学びましたが、それでも実際に社会生活を送り多忙な日々を過ごしていると、HIVに関しての関心や危機感も薄くなってしまうもの。
ゲイ男性の中でもHIVとエイズの違いを混同してしまっている方は少なくありません。しかし、HIVとエイズは全く異なるということをまずは理解してください。
HIVとは「ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)」の英語の頭文字を取ったもので、ウイルスそのものの名前を意味しています。HIVウイルスと覚えておくと分かりやすいですね。
一方でエイズは「後天性免疫症候群(Acquired Immunodeficiency Syndrome)」といって後天的に免疫能力が低下し、その結果引き起こされる免疫疾患に罹患した状態のことをいいます。
通常エイズとして認識される病気は23種類ほどあり、その例としてはHIV脳症、カポジ肉腫、非ホジキンリンパ腫、サイトメガロウイルス感染症、ニューモシスチス肺炎などです。
どこかで聞いたことがある病気ばかりですが、ようするにHIVに感染し極度に免疫が下がり、その結果23の免疫疾患のどれかを発症してはじめてエイズと呼ばれる状態に陥ります。
感染経路は3つに分かれる
HIVは身体と身体を重ね合わせることがリスク要因になると考えてしまいがち。間違いではありませんが、実際HIVの感染経路と言われるのは以下の3通りです。
血液感染
実際献血などでHIVに感染することはありませんが、覚せい剤などの違法薬物の注射の回し打ちなどで感染する可能性が指摘されています。
母子感染
妊婦がHIVに感染していると胎児がHIV感染のリスクに晒されてしまいます。
その場合は抗ウイルス薬の内服、そしてウイルスが検出される母乳を与えないことでHIV感染のリスクを低下させることができます。
性行為による感染
最も多いのが男女間もしくは同性間の性行為による感染です。
HIVを含む性病は基本的に膣分泌液、精液、血液が直接粘膜部位に触れることで感染します。
確率で言えば一番身近で感染リスクが高いのが性行為による感染だということは言うまでもありません。
なぜゲイ男性に感染者が多いのか
偏見のひとつですが、HIV感染はゲイ男性が感染する病気だと捉えられた時代もありました。勿論それは甚だ見当違いの間違った認識だと言えますが、令和の時代であってもゲイ男性の感染率はストレートの男女よりも高くなっています。
ここではなぜゲイ男性の感染ケースが減らないのかを考察していきましょう。
まず誤解しないでほしいことは、どんな性自認・性指向であってもHIVに感染するリスクはあること。世代に年齢も関係なく感染者はいるということです。
ゲイ男性もしくはバイ男性の場合は、
- パートナー以外にも性交渉を持つケースが少なくない
- 感染リスクの高い粘膜部の接触がある
- 同性間では妊娠の可能性がないため、避妊具を装着しないケースが多い
- 他の性病に感染していると、HIVや梅毒の感染が高まる(重複感染)
などの理由が考えられます。
実際にHIVのリスクを認識していたとしても、その場の雰囲気に飲まれて避妊具を装着しなかったり、もしくはある種の性病に感染しながらもその事実に気づかずに重複感染の可能性を高めてしまうことは少なくありません。
どちらにせよ、意識と行動が伴わないリスク管理の甘さがHIV感染のトリガーになっていくのです。
HIV感染後の症状、そして最近よく聞く「いきなりエイズ」とは
「いきなりエイズ」という言葉をご存知でしょうか。不吉な響きを拭い隠せないそんな「いきなりエイズ」の話を盛り込みながら、気になるHIV感染の症状についてを解説していきたいと思います。
こんな初期症状が出たら要注意
まず簡単にHIVに感染したらどうなるのかをみていきます。HIVに感染すると白血球の一種で、人の免疫を担っているCD4細胞が破壊されます。つまり徐々に免疫能力が下がり、身体の防御機能が低下し、通常の免疫能力があれば感染しない病原菌やウイルスにも感染しやすくなります。
HIVに感染すると急性期、無症状期そしてエイズ期と呼ばれる3つの異なるステージによる身体の違和感、不調を訴えるようになります。
急性期
HIV感染から2~4週間程度で感じる風邪のような症状。
身体の中でHIVウイルスが急増することによる反応ですが、吐き気や下痢、熱、倦怠感などを覚える方が多いようです。
HIV感染に敏感な方はこの些細な変化でHIV感染を疑う方もいますが、多くの方は疲れや風邪と勘違いしてHIV感染に気づきません。
無症状期
難しいのがHIV感染から1カ月程度経ち、急性期の身体の不調が嘘のように全く症状が見えない期間があります。これを無症状期と呼んでいますが、通常数年から15年程度、目に見える自覚症状がない期間を過ごすことになります。
ただし生活習慣やストレス、多忙さなど様々な要因が重なることで、無症状期の期間はかなり個人差があります。なお、最近はこの無症状期が短いスパンになることが多いようです。
エイズ期
エイズに認定される23の免疫疾患に罹患した時点でエイズを発症したことになります。その時期をエイズ期と呼んでいます。
HIVに感染すると上記の3つのステージに分類される自覚症状を見せるようになりますが、心辺りのある行為をした数週間後に風邪を思わせる症状が出てきたら黄色信号。
自分では風邪なのか疲れなのか、それともHIVの初期症状なのか分かりづらいので、不安や心配が拭いきれない場合は迷わず医師の診察を受けるようにしましょう。
最近ではセルフ検査が可能なキットもオンラインで販売されているので、クリニックに行く時間がない方はこれらを利用するといいでしょう。
「いきなりエイズ」の定義について
さて、「いきなりエイズ」についてですが、その言葉のままで、エイズの指標になる免疫疾患の1つ(または複数)になる、つまりエイズを発症した時に初めて自身がHIVに感染している事実を知ることを言います。
とても怖いですよね。
初期で感染の事実が分かっていれば早期治療による安定した予後を過ごせるはずなのに、HIV感染に気づかず何年または何十年も放置してしまった最悪の顛末です。
治療が遅れることでQOLの低下、予後の悪化につながるだけでなくパートナーや第三者に、HIVを知らず知らずに感染させてしまったかもしれません。
新規感染者は20~30代が多いですが、HIV感染に気づかずにいきなりエイズ状態になってしまう中年層は意外に多いもの。HIVは感染確率が低いからまさか自分が、と油断してしまうと最悪の結末にもなりかねませんので注意してください。
いかにHIV検査を受ける層が少ないか、またリスク管理ができていないかということを如実に示す結果であり、ゲイ、ストレート関係なく自身の危機管理を徹底する必要性が叫ばれているのです。
服薬をすれば寿命を全うできる!
HIVに感染すると一生直らない、エイズになったら終わり・・・
そんなネガティブな形容も少なくないHIVとエイズを取り巻く環境。
陽性者の人権や差別など社会的にも困難な状況が続いていますが、実際は投薬治療を継続的に行えば予後は非常に良好です。
ここでは最後のまとめとして、HIVに感染した際の治療方針についても触れていきたいと思います。ぜひ参考にしてみてくださいね。
カクテル療法を生涯継続する必要あり
まず忘れてならない点として挙げられるのが、HIVは投薬治療をしても完治することはないということ。つまり投薬治療の目的はHIVウイルスの量をコントロールし、高い免疫をキープすることです。
抗HIV薬の服用時期に関しては各国によっても差がありますが、CD4の数値の高さ、ステディーなパートナーがいるか否かで投薬タイミングが決まることが多いようです。基本的に複数の種類の抗HIV薬を同時に服用するカクテル療法がベースの治療方針になります。
以前は粒の薬を複数個服用してましたが、現在は2~3種の成分が含有した1錠の薬を1日1回服用するだけでよくなり、治療を受ける本人の負担も減りました。そのため、比較的早期の段階で服薬治療を開始することが多いようです。
なお、カクテル療法での投薬も薬に対しての耐性ができないようにする為、毎日忘れずに服薬を続けることが必須になります。ようするに生きている間は、いつもどんな時でも服用を続ける必要があるということです。
継続服用は簡単なことではありませんが、それさえ遵守すれば健常者と全く変わらない生活を送り、寿命を全うすることも可能になります。
気になる医療費は身体障害者手帳を申請することで高額な医療費の負担を減らし、所得に応じ0円~20,000円程度で投薬治療を受けることが可能です。
ただしCD4の値によっては障害者手帳申請が出来ないケースもあるので、まずはソーシャルワーカーやHIV感染者のためのNPO団体に問合せをしてみてください。
HIVに有効なワクチンはないの?
現段階でHIV感染を防げるワクチンは存在していません。
しかし性交渉前に抗HIV薬を服用することで、HIV感染のリスクを減らすという予防策は多くの国で有効な手段として認識されています。
日本ではあまり知られていませんが、この方法は「PrEP療法」と呼ばれています。抗HIV薬の1つであるツルバダやデコシビなどを日常的に、または行為前後の数日間服用することでHIV感染リスクを大幅に減少させることが可能です。
ただし100%の予防にはなりませんし、薬物耐性や副作用、医療費の問題も大きく、避妊具の着用率が下がるといったデメリットもあります。
しかしながらHIV感染のみではありますが、その予防効果は高いことが医学的にも認められているので、HIV感染不安の方などには有効なリスク回避になるかもしれません。
日本でPrEP療法を実施しているクリニックは少ないですが、気になる方は性感染症、HIV感染に対して高い実績のあるクリニックへ足を運び相談をしてみるといいでしょう。
まとめ
遠そうで近い存在、それがHIVなのかもしれません。
まさか自分がと思っていたら、そのまさかだった。そんな嘘のような本当は実際に至る所で報告されています。
勿論HIVに感染したら終わり、という訳ではありません。
抗ウイルス薬の投薬によって寿命を全うすることは十分に可能です。
しかしHIVに感染したがゆえの弊害、つまりは偏見や差別、継続した投薬など様々なハンディキャップを抱えることになります。
まずはHIVという病気を正しく理解し、そして自己防衛手段を徹底しながら、QOLを高めるための行動を常に意識していきましょう。
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